「青年の大成」―巨巌の顔-

今年になってからもウクライナの紛争や原料や物価の上昇、いろいろなことがおこっていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。そんな中でも季節はめぐり、今年も早いもので7月、今年の後半戦がまた有意義なときでありますように。今回は安岡正篤さんの「青年の大成」(致知出版社)の中の「巨巌の顔」から印象に残りましたところを引用、ご紹介させていただきます。

「青年の大成」―巨巌の顔-

その物語はアメリカの山村を舞台にした話で、その村には「巨巌の顔」と呼ばれる人間の顔にそっくりな大きな岩がそそり立ち、村にはこんな伝説が伝えられていました。

「いつか将来、この近辺に子供が生まれ、その子供は偉大で高貴な人物になる運命を担っており、その顔は、大人になると「巨巌の顔」によく似てくるだろう。」というものでした。アーネストという少年は母からこの話を聞かされ、この話を信じて、毎日その岩を眺めていました。

 

その頃、大昔から予言されていた「巨巌の顔」に似ている偉人がついに現れたという噂が村に広まりました。何年か前に一人の若者がこの村から出て行き商売を始め大金持ちになって、彼は自分の生まれた故郷に帰って生涯を終わりたいと決心し、故郷に大邸宅を建てたのでした。人々は「かれこそ『巨巌の顔』の像そのものだ」と熱烈に歓迎しました。しかし、大金持ちになって戻ってきた彼は、そうではありませんでした。 歳月は過ぎ去り、アーネストはもう若者となっていました。そのころ、あの大邸宅を建てた大金持ちは亡くなり、村の人々は彼のことなどすっかり忘れています。すると、今度は、この村に生まれたある人が、今や名高い軍人となり、この村に帰って来ると。そして今度こそは「巨巌の顔」の似顔が本当に現れたのだと断言され、熱心に歓迎されることとなりました。しかし、今度の名高い軍人として戻ってきた彼も、獰猛ではありましたが、そうではありませんでした。

更に歳月は過ぎ去り、アーネストはもう中年の男になっていました。これまでと同じように彼はパンのために(食べるために)働き続けています。

彼は身分こそ低いが、彼が生きていたために世の中がそれだけよくならない日は一日としてありませんでした。つねに隣人に祝福をさし伸べていると、ほとんど無意識のうちに、彼は道を説く人となっていたのです。清らかで素朴な彼の思想は、善行の言葉となって村人を包み込みましたが、彼の話を聞く人々は、アーネストが凡人以上の者であるとは決して思いませんでした。 時が経って、一人の政治家が村に現れました。彼は雄弁で彼を大統領に選ぶようにと彼は国の人々を説きつけました。彼の礼賛者達は深い感銘を受けたので、この有名な紳士を迎えるための盛大な準備がされました。しかし、彼も「巨巌の顔」の伝説の人物ではありませんでした。

さらに、歳月はすぎ、アーネストには白髪をもたらし、彼の顔には皴と、また頬にも深い筋が。アーネストは既に無名の人物ではありませんでした。求めずして、衒(てら)わずして、多くの人々が遠方から慕いよってきました。共に語り合っていると、アーネストの顔は知らず知らず輝いて、彼等を照らすのでした。

この頃には、習慣で、日没時にアーネストは戸外で、近所に住む人々に説教することになっていました。そして語り始めました。その時、一人の詩人が思わず叫びました。

「見よ。アーネストこそ、『巨巌の顔』の写しだ!」人々は驚いて、じっと見較べました。

そして詩人の言ったことが真実だと分かりました。

しかし、アーネストは、演説を終えると、ゆっくりと家の方に歩いて行きました。

そして、誰か彼よりも賢明で、徳のすぐれた人が「巨巌の顔」に似た姿で、程なく現れるだろうといつも通り望み続けるのでした。

安岡正篤さんは、偉大とはこういうことをいうのだといわれています。自分たちが生きている中でまわりのものをいかに照らしていけるのか。アーネストのような生き方にまた憧れを感じた今日この頃でした。

参考文献:「青年の大成」(著者 安岡正篤 致知出版社)  

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