難題が飛び込む男 土光敏夫

早いもので今年ももう11月となりました。

暑かった夏がうそのように、朝夕の寒さがめっきり秋の気配を感じさせてくれる今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

今年の9月10月には近年まれにみる大型の台風、そして地震、多くの方が被害にあわれたことと思いますが、この場をおかりして、心よりお見舞い申し上げます。

 

今回は、「メザシの土光さん」で有名な土光敏夫さんについて書かれた「難題が飛び込む男 土光敏夫」(日本経済新聞出版社)から印象にのこりましたところをご紹介させていただきます。

 

土光さん

土光敏夫さんは1896年生まれ。昭和25年54歳の時に石川島重工業の再建のために社長に就任。それを成功させると、昭和40年69歳の時に東芝の再建のために社長に就任。その後昭和49年に経団連会長に就任。昭和56年には、日本の行財政改革をすすめるべく臨時行政調査会会長に就任。

当時は国鉄の再建民営化が難航していた時代でしたが、翌年NHK特集「85歳の執念 行革の顔 土光敏夫」で、メザシとおひたしという夕食、質素な生活で、日本のため行政改革にとりくまれている土光さんの姿が全国放映され、当時田中角栄をはじめ多くの政治家、役人の方々が「あの人が行革をやるなら、文句は言えん」と納得されたといいます。

 

3つの再建と土光語録

本書では、土光さんが3つの再建(難題)(石川島重工業、東芝、行政改革)に取り組まれた中で、「現場の達人」としてその力を発揮していかれた姿、「凛とした背中」でまわりをひっぱっていかれた姿が描かれていました。

以下印象に残りましたところを記させていただきます。

 

土光語録(抜粋)

①組織活動にユサブリを与えよ。

このチャレンジに対しレスポンスが生じ、組織活動はダイナミックになる。

②権限をフルに行使せよ。責任とは権限を全部使い切ることだ。

③体質改善は水を高きに上げるが如し。寸時も油断すれば水は流れ、体質は悪化する。

④意思決定は最後は勇気の問題に帰着する。

⑤顧客を動かすのは、結局、誠意である。

真に誠意を持って当たれば、不信すら信頼に代えることができる。

⑥現場には「銀座通り」もあれば、裏通りもある。幹部は裏通りを歩くべきだ。

⑦火種が強ければ青草でも燃え上がる。

 

東芝再建の時のエピソード

土光さんが、夜行列車で姫路にある東芝の工場を訪ねて、とんぼ返りでまた東京へすぐ帰る時のこと。

「工場の庭に従業員を集めて、土光が話をしたが、あいにく小雨が降っていた。女子従業員は傘をさしながら、土光の話を聞いていた。が、土光は傘をささない。東芝の現状、人間の話、能力開発の話などをトツトツと話す。…

遠くで聞いていた女子従業員たちが、傘を閉じて土光の方に近づいてくる。雨の中で従業員に真剣に訴える老社長の話と姿に心を打たれ、いつの間にか傘は一本も見えなくなった。…

話が終わって、びしょぬれになった土光が車に乗った。やはりずぶぬれの従業員が、ワーッと車を取り囲む。…」(「土光敏夫 21世紀の遺産」)

 

 

土光さんについては、「無私の人」だとか、「努力の人」、「溢れる愛情の人」だとか言われていますが、座右の銘は、「日に新たに 日々に新たなり」(昨日も明日もなく新たに今日という清浄無垢の日を迎える。今日という日に全力を傾ける。)、

もう一つ、「艱難汝を珠にす」(挑戦し、艱難を自ら課し続ける人間のみが、不断の人間的成長を遂げる。)

 

レベルが違いすぎて、言葉もでませんが、こういう方が日本にいてくださったことを誇りに思います。

少しでも成長して、人の役にたてる人間、世の中の役に立てる人間になろうと思いましたと同時に、今年の残された時間を、精一杯、挑戦していきたいと思った今日この頃でした。

 

 

 

参考文献  「難題が飛び込む男 土光敏夫」

(伊丹敬之 日本経済新聞出版社)

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