新将命さんの『「葉隠」の箴言』

今年になってからも緊急事態宣言の発令と解除が繰り返されていますが、そんな中でも季節はめぐり、今年も早いものでもう7月になりました。いよいよオリンピックがスタート、ワクチン接種もすすみあとしばらくのしんぼうです。今回はジョンソン・エンド・ジョンソンなどの社長を歴任された新将命さんの『「葉隠」の箴言』(致知出版社)からご紹介させていただきます。 

「葉隠」

「葉隠」は江戸中期の武士の修養書で、肥前(佐賀)鍋島藩の藩士山本常朝が武士の生きざまについて語った談話をベースにまとめられたことから、別名「鍋島論語」とも言われているそうです。書中の「武士道とは、死ぬ事と見つけたり」という一句が特に有名です。

この「葉隠」について、『「葉隠」の箴言』の著者の新将命さんは、三百年前の組織人の心得、振る舞い方について詳細に述べられている当時の「ビジネス書」で、現代にも通用する原理原則がしっかり貫かれていると評されています。以下印象に残りましたところを引用させていただきます。

「武士道とは、死ぬ事とみつけたり」

この強烈なフレーズは、現代のビジネスに置き換えることが難しい、現代のビジネスには、切腹はないからです。しかし、現代のビジネス社会でも、捨て身になる、我が身をなげうってやってみるという時はあります。乾坤一擲という事態に遭遇することは一生に一度や二度ではありません。 安定ばかりを求め、保身のために汲々として過ごしていたのでは仕事を楽しめません。仕事が面白くなくて、結果がだせるはずがありません。心が保身に怯え、自由と活力を失っていたら、良い仕事ができるはずがありません。よい仕事をして、良い結果を出すには、心を解放してやらねばなりません。心を怯えから解放してやるには、心を束縛している保身への執着を捨てることです。

心に自由を得て仕事に取組めば、生涯落ち度なく役目を果たすことができますし、実は自分自身を活かすこともできるのです。

このように、新将命さんは、「葉隠」を、「滅私奉公」ではなく、組織の中で自分を活かして働くための「活私奉公」の知恵を記した指南書としてとらえられ、解説をされています。 保身か捨て身かというという二者択一の場面で、損得を考えないということは難しいことです。どうしても損得が目の前にちらつきます。我が身が大事で捨てる覚悟などそうそう出来るものではありません。しかし、そうすると、修羅場に向かう心と身体がすくんでしまいます。そうなると、もう自分が大切にしているよい仕事などできなくなってしまいます。だから新将命さんが言われるように、現代でも、大切にしている仕事をしっかり磨いて、普段から腹をくくっておくことが大事なんだと。

三百年前の箴言にふれ、改めて考えさせられた今日この頃でした。

参考文献 : 『「葉隠」の箴言』」  (著者新将命 致知出版社)

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