「所有者不明土地等に係る固定資産税」と「消費税の申告期限の特例」

令和1年12月に、令和2年度(2020年度)税制改正大綱が政府与党より発表されました。

今回はその中から「所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応」及び「消費税の申告期限の延長の特例の創設」についてふれていきたいと思います。

 

「所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応」

固定資産税の納税義務者は、原則として登記記録上の所有者ですが、当該所有者が死亡している場合には、「現に所有している者」(通常は相続人)となります。しかし、土地や家屋を使用収益している者がいるにもかかわらず、所有者が正常に登記されていない等の理由により課税庁が調査を尽くしてもなお当該資産の所有者が一人も明らかとならない場合においては、固定資産税を課すことができず、課税の公平性の観点から課題がありました。これらの課題に対応するため、迅速・適正な課税に資する観点から、相続人等に対し、「現に所有している者」として、その氏名、住所等を申告させることができる制度が創設されました。

また,地方公共団体が調査を尽くしても所有者が一人も明らかとならない資産について,当該資産を使用収益している者が存在する場合,あらかじめ当該使用者に通知を行った上で,使用者を所有者とみなして課税されることとなりました。

 

①現に使用している者の申告の制度化

市町村長は、その市町村内の土地又は家屋について、登記簿等に所有者として登記等がされている個人が死亡している場合、当該土地又は家屋を現に所有している者(以下「現所有者」という。)に、当該市町村の条例で定めるところにより、当該現所有者の氏名、住所その他固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができることとする。

(注1)固定資産税における他の申告制度と同様の罰則を設ける。

(注2)上記の改正は、令和2年4月1日以後の条例の施行の日以後に現所有者であることを知った者について適用する。

 

②使用者を所有者とみなす制度の拡大

市町村は、一定の調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合には、その使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができることとする。

(注)上記の改正は、令和3年分以後の年度分の固定資産税について適用する。

 

「消費税の申告期限の延長の特例の創設」

法人税では、申告期限の延長の特例により申告期限を原則1か月延長し、決算日から3か月後を申告期限とすることができます。ただし、消費税には法人税のように申告期限を延長する特例が無いため、法人税は申告期限から3か月後、消費税は決算日から2か月後と、それぞれ申告期限が異なるケースが生じていました。今回、消費税の申告期限も法人税と同様に1か月延長する特例が創設されました。

法人税では、決算日の翌日から3か月以内に定時株主総会を招集できない常況の場合は、最大4か月間の延長が認められますが、消費税の延長期間はあくまで1か月です。また、消費税の申告期限の延長の特例は法人税の申告期限の延長を受けている法人が対象で、消費税のみ申告期限を延長することは出来ません。

なお、延長期間中に納める消費税については法人税と同様に利子税が必要です。

要件 申告期限を延長する旨の届出書の提出
効果 届出書の提出した日の属する事業年度以後の各事業年度の末日の属する課税期間に係る消費税の申告期限を1か月延長
適用時期 令和3年3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間

 

<参考>財務省 税制改正の大綱

https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2020/20191220taikou.pdf

 

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