令和元年を振り返ってみると、改元やラグビーワールドカップなど喜ばしい出来事が多くあった一方で、台風による浸水被害など災害も多くあった年となりました。
被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。
今回は、災害にあって被害を受けてしまった場合の税金面での救済措置のうち、所得税の雑損控除について解説します。
雑損控除は、
「損失額-所得金額の10%」 または
「損失額のうちの災害関連支出金額-5万円」
のうちいずれか多い金額を、災害を受けた年の所得金額から控除(マイナス)することができます。
その年の所得金額からマイナスしきれない金額があるときには、その金額を最大3年間繰り越して各年の所得・税金を減らすことができます。
適用することが出来れば納税面で大変有利になるこの雑損控除ですが、適用を受けるための最大の難関が先の式に示されている「損失額」の算定です。
被災された方には、ご自宅にあった家財道具の多くを捨てるしかないほど大きな被害にあわれた方もたくさんおられると思います。
雑損控除を受けるにはこうした家財道具の「損失額」を計算しなければならないとされています。
しかし確定申告の時期になって、いちいちダメになった電化製品の購入価額などをチェックできるはずなどありません。
そこで、こうした場合には「損失額の合理的な計算方法」を使って損失額を計算してかまわないとされています。
この計算は大きく分けて
1 住宅 2 家財 3 車両
の3項目について設けられています。
このうち2の「家財」については次のように年齢や家族構成によって家財の額を定めています。
<家族構成別家財評価額>
世帯主の年齢 |
夫婦 |
独身 |
~29歳 |
500万円 |
300万円 |
30~39歳 |
800万円 |
|
40~49歳 |
1100万円 |
|
50歳~ |
1150万円 |
※大人(年齢18歳以上)1名につき130万円を加算、
子供(年齢18歳未満)1名につき80万円を加算します。
例えば、40代夫婦・18際未満の子供2人の場合、
1,100万+80万+80万=1,260万円が家財道具の金額となります。
雑損控除の対象となる損失額を計算するには、この金額に「被害割合」を乗じる必要があります。
例えば、被害割合が80%であれば1,260×80%で1,008万円が損失額ということになります。
家屋が全壊した場合の被害割合は100%、半壊なら50%といったように、「被害割合」の計算についても、国税庁が算定表を定めています。
上記の判定は国税庁が雑損控除被害額算定のために設けたもので、被害の証明に当たって自治体が発行する「罹災証明書」の判定基準とは同一のものではありませんので注意が必要です。
雑損控除適用の際には必ず、国税庁の判定表をご覧になってください。