平成27年に相続税の基礎控除額が下がり、相続税が課税されるケースが大幅に増えました。また、令和5年度の税制改正により、暦年贈与に関してこれまでより納税者不利になることがわかりました。
今般、タワマン節税について当局のメスが入り、これまで納税者有利に働いていたタワーマンション等の相続税評価方法が大きく変わることとなりました。
これまで、マンションの土地部分は全体の相続税評価額に登記上の敷地権の割合を乗じた価格で評価し、マンションの建物部分は固定資産税評価額を用いて評価していました。
【不動産の相続税評価額】
・土地:路線価(市場価格の80%程度) ※路線価がない土地は「倍率方式」
・建物:固定資産税評価額(市場価格の70%程度)
2024年1月以降に発生した相続に関しては、以下のルールで計算されます。
【新通達におけるマンションの相続税評価額の計算ルール】
・第1段階:「乖離率」を算出する
・第2段階:「乖離率」が「1」未満または「3分の5」超であれば補正を行う
乖離率の計算は、以下により行います。
【乖離率の計算式】
乖離率=A+B+C+D+3.220
・A:築年数×(-0.033)
・B:総階数指数(総階数÷33)×0.239(小数点以下第4位切り捨て)
・C:住戸の専有部分の所在階×0.018
・D:住戸の敷地持分狭小度×(-1.195)(小数点以下第4位切り上げ)
A:マンションの築年数が経過しているほど、乖離率は下がる
B:総階数が多いマンションほど乖離率は上がる
C:高い階ほど乖離率は上がる
D:土地の面積に対する敷地権が専有床面積と比較して大きいほど乖離率は下がる
そして、この乖離率が「1」未満または「3分の5」超であれば補正を行います。
【補正率】
・評価乖離率が「1」未満の場合:補正率=評価乖離率
・評価乖離率が「3分の5」超の場合:補正率=評価乖離率×60%
乖離率が「1」より小さければ小さいほどこれまでの計算方法による相続税評価額が時価に対して高いということで、反対に「1」より大きければ大きいほどそれが時価に対して低いということになります。
評価額を算出するには以下の式に当てはめます。
従来の評価額×補正率
計算例を用いてみます。
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・条件
従来の評価額:4,000万円
評価乖離率:3.534
※乖離率が「3分の5」超である
よって、補正率は3.534×60%=2.1204
4,000万円×2.1204=8,481万円
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このケースでは、相続税評価額が2倍以上に跳ね上がりました。
2023年以前に購入した不動産に関しても、新たな計算方法が適用されますので、これまで節税のためにマンションを購入していた方にとっては嬉しくないニュースです。逆に、相続税評価額が時価より高い(価値の低いマンション)を所有されている場合は、得になるケースもあるようです。 タワーマンションの購入は、相続対策としては慎重になる必要がありそうです。